民法の一部を改正する法律案
 民法(明治二十九年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。

 第七百五十条に次のただし書を加える。
 ただし、職業生活上の事情、祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を称する必要がある場合において、家庭裁判所の許可を得て、婚姻の際に各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをしたときは、この限りでない。

 第七百五十条に次の四項を加える。
 夫婦が各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするときは、夫婦は、婚姻の際に、夫又は妻の氏を子が称すべき氏として定めなければならない。
 氏を異にする夫婦は、その合意に基づき、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、夫又は妻の氏を称することができる。この場合には、前項の子が称すべき氏の定めは、その届出の時から将来に向かつてその効力を失う。
 氏を異にする夫婦の嫡出である子が出生した場合において、その子がその夫婦の最初の嫡出である子となるときは、父母(父母の一方が死亡したとき、又はその意思を表示することができないときは、他の一方)は、その子の出生の際に、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、第二項の子が称すべき氏と異なる父又は母の氏をその子が称する氏として定めることができる。この場合には、その子が称する氏として定めた氏をその父母の婚姻の際に同項の子が称すべき氏として定めたものとみなす。
 氏を異にする夫婦が共に養子をする場合又は氏を異にする夫婦の一方がその配偶者の嫡出である子を養子とする場合において、その養子がその夫婦の最初の嫡出である子となるときは、その夫婦(夫婦の一方で縁組の当事者でないものがその意思を表示することができないときは、他の一方)は、縁組の際に、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、第二項の子が称すべき氏と異なる夫又は妻の氏をその養子が称する氏として定めることができる。この場合には、前項後段の規定を準用する。

 第七百九十条第一項を次のように改める。
 嫡出である子は、父母の氏(子の出生前に父母が離婚したときは、離婚の際における父母の氏)又は第七百五十条第二項の子が称すべき氏を称する。

 第七百九十一条第一項に次のただし書を加える。
 ただし、父母が氏を異にする夫婦であつて子が未成年者である場合には、特別の事情があるときに限る。
 第七百九十一条第二項中「前項の許可を得ないで」を「前項の規定にかかわらず」に改め、「父母の氏」の下に「又はその父若しくは母の氏」を加え、同条第三項中「前二項」を「前三項」に改め、同条第四項中「前三項」を「前各項」に改め、同条第二項の次に次の一項を加える。
 子の出生後に婚姻をした父母が氏を異にする夫婦である場合において、子が第七百五十条第二項の子が称すべき氏と異なる氏を称しているときは、子は、第一項の規定にかかわらず、戸籍法の定めるところにより届け出ることによつて、同条第二項の子が称すべき氏を称することができる。ただし、父母の婚姻後に第一項の許可を得て氏を改めた子については、この限りでない。

 第八百十条を次のように改める。
 第八百十条 養子は、養親の氏(氏を異にする夫婦が共に養子をするときは、第七百五十条第二項の子が称すべき氏)を称する。
 氏を異にする夫婦の一方が配偶者の嫡出である子を養子とするときは、養子は、前項の規定にかかわらず、養親とその配偶者についての第七百五十条第二項の子が称すべき氏を称する。
 養子が婚姻によつて氏を改めた者であるときは、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、前二項の規定を適用しない。


附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(非訟事件手続法の一部改正)
第二条 非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)の一部を次のように改正する。
 第百十八条中「妻ト為ルべキ者」の下に「、各自ノ婚姻前ノ氏ヲ称スルトキハ民法第七百五十条第二項ノ子ガ称スベキ氏ト為ルベキ氏ヲ称スル者」を加える。

(家事審判法の一部改正)
第三条 家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)の一部を次のように改正する。
 第九条第一項甲類第四号の次に次の一号を加える。
 四の二 民法第七百五十条第一項ただし書の規定による各自の婚姻前の氏を称する旨の定めをするについての許可
 第九条第一項甲類第六号中「第三項」を「第四項」に改める。


理 由
 夫婦となろうとする者が、職業生活上の事情、祖先の祭祀の主宰その他の理由により婚姻後も各自の婚姻前の氏を称する必要がある場合において、家庭裁判所の許可を得て、婚姻後も各自の婚姻前の氏を称することとする例外的夫婦別氏制を導入する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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