コラム

政策提言

デジタル・アーカイブの推進に向けた申入れ―「デジタル文明立国」に向けて―

2008.03.19政策提言

デジタル・アーカイブの推進に向けた申入れ
―「デジタル文明立国」に向けて―

平成二十年三月十二日
自由民主党 政務調査会
デジタル・アーカイブ小委員会
委員長 野 田 聖 子

一 はじめに
・当小委員会では、世界最先端のデジタル・アーカイブを目指して、平成十五年七月及び平成十六年六月に、「国立デジタル・アーカイブ」構想の推進等を提言する申入れを行った。この結果、昨年十月に国立国会図書館によりわが国のデジタル・アーカイブの総合ポータルとなるPORTA(注①)が開設され、国民の利用環境が著しく改善されるなど、当小委員会の提言に沿った取り組みが進展しつつある。
・一方、生成、消滅が著しいわが国のインターネット情報の収集・保存に係る「ジャパン・ウェブ・アーカイブ」構想については、国立国会図書館法改正を申入れたものの、未だ実現するに至っていない。
・平成十六年六月以降、デジタル・アーカイブを巡る世界の潮流は激しさを増し、増加する電子公文書の管理・保存、図書館等収蔵資料のデジタル・アーカイブ化、インターネット情報の収集のいずれをとっても、わが国は大きく遅れをとり、世界的な相互連携・協力の枠組みにすら参加できていない状況に置かれている。
・わが国は世界最先端のICTインフラを整備しながら、これを活用することなくデジタル情報を海外に依存する、いわゆる「情報貧国」に陥りかけていると言わざるを得ない。
・これは、わが国がデジタル情報を生み出していないからではなく、それを収集・保存すること、すなわちデジタル・アーカイブ化の取り組みを怠っているからである。いかにしたらデジタル情報資源の自給率を上げ、海外へも提供・貢献できる「情報富国」になるか。すなわち、「デジタル文明立国」を実現するための戦略について、当小委員会は、昨年十一月から審議を重ねてきた。
・国立国会図書館、国立公文書館の両館長、情報技術、図書館学、法学の各専門家と意見交換を行い、早急に実施すべき重要施策を以下のとおり取りまとめた。
・二十一世紀以降続くデジタル文明期において、教育、産業、国民に開かれた政治、文化外交、安全保障などは、利用できるデジタル情報に依存する。また、ナショナル・アイデンティティ、人類史における日本と日本人の位置付けなどは、デジタル情報をいかに後世に残していくかにかかっている。このことを常に念頭において、本提言が関係者、各関係機関の連携・協力により早急に実施されることを強く要請する。

二 提言項目
(一)電子公文書に対応した公文書管理制度の創設
・国は、公文書館推進議員懇談会「緊急提言」(平成十九年十一月)を踏まえ、取り組みを加速化すること。特に、公文書の作成から移管・廃棄まで一貫した文書管理体制を実現するための「公文書管理法(仮称)」の制定に早急に着手すること。
・国は、今後予定される公文書管理の抜本改革において、急速に増加している電子公文書についても、その管理・移管・保存方法を確立し、国立公文書館への移管を的確に行うための電子公文書の管理体制を早急に確立すること。「緊急提言」において言及されている事項もあるが、デジタル・アーカイブ化を推進する観点から、特に、以下の取り組みを行うこと。
①電子公文書に係るアーキテクチャの陳腐化、記録媒体の劣化等の課題を克服するため、管理・保存方法のルール化、メタデータの標準化(注②)、長期保存フォーマットの標準化等を行うこと。
②また、電子公文書の見読性を長期間にわたって確保していくためのマイグレーション方法(注③)のルール化を行うこと。
③電子公文書の原本性を確保し、改竄防止と公開を長期間にわたって両立させるための技術的な方法やルールを確立すること。
④ウェブ上の公文書については、他の公文書と同一の基準で管理・保存範囲が決定されることが原則となるが、その特性に応じた評価基準や移管・保存対象の詳細、移送方法、保存・利用方法のルール化を行うこと。

(二)デジタル時代に対応した国立国会図書館の機能の強化
●国立国会図書館のウェブアーカイブの本格実施のための法制度の実現
・国立国会図書館は、原則として日本の全てのインターネット情報を収集・保存する従来の方針を堅持しつつも、政府情報、学術情報等公共性が高く保存する必要のあるもの、現在又は将来における国政審議、調査・研究等の公共目的での利用が見込まれるものに限定した収集・保存の早期本格化を目指すこと。このため、平成二十一年度早期を目標に国立国会図書館法の改正法案を国会に提出すること。
・法案においては、欧州各国の国立図書館における法制度と同様に、言論が萎縮しないよう配慮しつつ、ウェブアーカイブの本格実施を可能とする著作権制度を創設すること。具体的には、事前公告による事前及び事後のオプトアウト容認等を前提とした複製権、公衆送信権の制限を軸に検討すること。
●全国図書館のデジタル・アーカイブの統合化
・国は、国立国会図書館を中心に全国の図書館が統合的なデジタル・アーカイブを構築し、地域格差なく全国民に共通の利用環境を提供するため、図書館間でのデジタル化された収蔵資料の相互利用、館内公衆端末での閲覧が可能となる著作権制度を創設すること。

・国は、デジタル・アーカイブ化した収蔵資料のネット公開を容易にするため、著作権管理団体が構築する著作権データベースの活用等著作権者が不明な場合の文化庁長官裁定制度の円滑な利用が可能となる制度改善を行うこと。

(三)国立公文書館と国立国会図書館の連携強化
・国立公文書館と国立国会図書館は、デジタルアーカイブ・ポータルやウェブアーカイブなどの構築・運営に当たり、相互の役割の違いを尊重するとともに、国民の利便性の向上を図る観点から、連携・協力に努めること。

(四)国家戦略としての取り組み強化
●「デジタル情報資源戦略」の策定
・国は、わが国のデジタル情報の生成・蓄積・利用を戦略的・統一的に推進するため、「国立デジタル・アーカイブ」構想を核としたデジタル・アーカイブの構築促進と教育・学術、外交、産業、情報通信、情報公開等幅広い分野での利用促進を内容とする「デジタル情報資源戦略」を早急に策定すること。また、本戦略を計画的に推進するため、内閣に「デジタル情報資源形成・活用戦略会議」やデジタル・アーカイブに係る専門部署の設置などを検討すること。
●デジタル・アーカイブに係る要員、予算の充実
・国は、海外諸国との比較において大いに見劣りのする国立公文書館、国立国会図書館の要員、予算規模の改善を早急に実施し、少なくとも国際水準の維持に努めること。特に、デジタル・アーカイブについては、情報発信に係る国際競争力の強化の観点から、要員及び予算の充実に努めること。
・特に、国際的にも高い評価を得ているアジア歴史資料センターの事業の強化を図るととともに、同事業に協力する外務省、防衛省等の資料のデジタル化が推進されるよう、予算の充実に努めること。
・国は、特に取り組みの遅れている地方自治体の公文書館、公立図書館等に係るデジタル・アーカイブの構築を促進するとともに、デジタル・アーカイブに携わる高度の専門性を有する要員の養成を推進すること。
●「国立デジタル・アーカイブ」構想の一層の推進
・国は、公共的なコンテンツ・情報のデジタル・アーカイブ化を一層推進すると共に、コンテンツ分野に応じたフォーマットやメタデータの標準化を推進し、国民が、シームレスに多くのデジタル・アーカイブを利用できる環境(「国立デジタル・アーカイブ」構想)の整備に努めること。
・国立公文書館及び国立国会図書館は、関係府省の協力の下、全国の公文書館、図書館におけるデジタル・アーカイブ構築について、メタデータ付与等に係る技術面、ノウハウ面における支援、協力を行い、より多くのデジタル・アーカイブが「国立デジタル・アーカイブ」構想に参加するように努めること。

・国立国会図書館は、関係府省の協力を得て、わが国のデジタル・アーカイブの総合ポータルの検索機能の充実等により、各分野でのデジタル・アーカイブの利用の拡大を図るとともに、多言語サポート機能の強化によるわが国のデジタル・アーカイブの海外利用の拡大を促進すること。

●世界最先端のデジタル・アーカイブ技術への対応
・国は、世界最先端のウェブ・アーカイブ技術がわが国において開発されるよう、インターネット上の情報の収集・保存・分類・整理・検索等に関する大学、研究機関の技術開発プロジェクトを促進すること。また、収集したインターネット情報の社会人文学研究等への応用手法の開発プロジェクトを促進すること。
・また、国は、インターネット情報の収集等に係る技術開発等のための一時的な収集については、諸外国の取扱いを参考として、複製権の制限等の著作権制度の在り方について検討すること。


注①:国立国会図書館が昨年十月に運用を開始したわが国のデジタル・アーカイブの総合ポータルサイトの名称。PORTAとは、ラテン語の「門」の意味。
注②:データに関するデータ(情報)のこと。例えば、作成日時や作成者、タイトル、含まれる内容、権利関係、利用制限関係の情報等。多くのデータの統一的な管理や効率的な検索のためには、標準化することが必要になる。
注③:データやプログラムの移行・変換作業のこと。電子文書の作成環境を提供するハード、ソフトの変更が極めて頻繁であり、必ずしも互換性が保証されていないことから、電子文書の見読性を継続して維持・保管するためには、作成環境時とは異なるハード、ソフト環境に移行・変換することが不可欠となる。

参考
1 各国の国立図書館における収蔵資料のデジタル・アーカイブ化の取組み
2 各国の国立図書館等におけるウェブ・アーカイブの取組み
3 各国の国立公文書館の比較
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